東芝・過労うつ病労災・解雇裁判
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裁判

平成16年(ワ)第24332号解雇無効確認等請求事件

最終意見陳述書

 
 東芝を解雇され、裁判を提訴してから3年がたちました。本日、やっと結審を迎えられることをうれしく思います。うつ病発症してからは6年がたったことになります。私にとっては、大変な道のりでした。

 休職するまでの間、私は地獄にいるようでした。M2ラインの無茶なスケジュールを死守することを強いられ、トラブル対策が少しでも遅れると、上司たちからはきつく叱られました。プレッシャーの強い環境下で、睡眠時間を削りながらの長時間過密労働が続き、私は、体力・精神力とも疲れ果て、精神科に通い始めました。そして突然、新製品の開発責任者への業務変更になり、あまりの負荷の高さに倒れてしまいました。しかし、課長に体調の不調を訴えても仕事をやらされました。課長は「うつじゃないの」と心配そうに言った翌週、私が体調不調で休んでいる時に、自宅に電話をかけてきて、会議に出席して欲しいと言ってきたのです。強い恐怖と絶望感が体を走りました。会社にいることが嫌でたまらない精神状態になり、私は会社を休職することになりました。休職してから体調は良くなっていきましたが、それでも、ただ横になっているだけでもつらい闘病生活が何か月も続きました。今も寝たきりの生活は続いています。

 M2ラインや反射業務をしていなければ、私はうつ病を発症してもいないし、会社を休職することもありませんでした。私のうつ病発症原因が業務であることは、明らかです。私の労働時間は、東芝が認めているだけでも、相当長時間に及んでいます。私は通常は睡眠を7時間とるようにしていましたが、当時その7時間も取れなかったことは、被告も最終準備書面で「6〜7時間」という書き方で認めています。

 そして、課長は証人尋問で、深夜労働・残業時間が多かったことと、5月に頭痛で長期間休んだことを、「関連付けては考えておりません」などと言い放ちました。こんな上司のものでは、部下が病気になって当たり前です。そして、こんな上司のいる会社が、安全配慮義務を果たしていないことは明らかです。会社の最終準備書面では、5月に私が倒れた後、時間外労働の削減を行うなど配慮したといっています。これは、体調悪化が長時間労働やM2ライン・反射業務の負荷が高かったことによるものだと会社が認識していたということに他なりません。そして、会社が言うような配慮がなされたこともありませんでした。私がうつ病を発症した同じ年に、同じ職場で2名の自殺者も出ました。こんな職場が異常であることは明らかです。


 
 裁判が始まって以降も、東芝は嫌がらせを始めました。タイムカードは当時私が作ったものは違うニセモノを提出しました。重要な業務資料の提出は拒否し、私が業務資料を提出すると、「社外秘の資料を持ち出すとは就業規則違反、懲戒解雇処分にあたる」と威嚇をしました。さらに、5年前の就業規則が見つからないと、提出に5ヶ月もかけました。就業規則が見つからないなどとても考えられないことで、無職の病人相手に裁判の引き伸ばしをしたとしか思えません。裁判のたびに私の体調は悪化し、薬の量も増えていきました。

 東芝は、最終準備書面でメンタルヘルスに積極的に取り組んでいますと書きながら、「原告が6年以上治ゆしていないことからしても、原告の病気発症の原因は業務に起因するものではないと考える」と書いています。しかし、うつ病は対応が早ければ治癒も早いが、手当てが遅れると長引く病気であることは、多くの文献に載っています。こんな意見を裁判所に提出すること自体、東芝はメンタルヘルスへの理解のない会社と公言していることと同じです。私の解雇当時も、会社からは「うつ病なんて、本人のやる気の問題」と言わんばかりの対応を受けました。東芝のメンタルヘルスは、今も問題だらけであり、配慮義務を尽くしていたという東芝の主張は明らかに間違っています。

 私は技術者という仕事が好きでした。戻れるものなら、また開発の最前線で働きたい。しかし、今の私は、外出もままならず、旅行に行くことさえ出来ません。健康になりたい、それが今の私が精一杯望むことです。寝たきりで過ぎ去った6年間、技術者としての将来への展望や普通の生活など、私はたくさんのものを失いました。会社が過重な労働をさせなければ、私が病気になることも無かったし、私が最初に体調の悪化を訴えたときに適切に対応していれば、病気が長引くことも、いくらでも防げたはずです。

 東芝の訴訟態度やメンタルヘルスに対する偏見等、裁判が進むにつれ、東芝の対応には失望することだらけでした。東芝に対しては、強い反省を望むと共に、労働環境改善やメンタルヘルス改善、特に管理者教育を徹底していただきたいと思います。業務を優先し、部下の健康に配慮しないことが間違いである事を、東芝は社内に徹底させて下さい。

 私の味わった苦痛や失ったものは、お金に代えられるものではありませんが、過重な労働によって精神疾患になることが非常につらく苦しいことを分かってほしいし、同じ様な過重労働で苦しむ人がいなくなってほしいと思っています。そして、うつ病に対する偏見が少しでもなくなり、社会のメンタルヘルスが向上することを願っています。
 裁判所にはぜひとも公平な判決をお願いします。

 東京地方裁判所 民事第11部 御中
 2007年12月17日
                                   原 告 重光由美
 


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