東芝・過労うつ病労災・解雇裁判
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裁判

被告 答弁書

平成16年(ワ)第24332号解雇無効確認等請求事件
原告 重光由美
被告 株式会社 東芝

                 答   弁   書
 
                       平成17年1月24日
      
東京地方裁判所 
 民事第11部い係  御中
                 
         (送達場所)
          〒100-0005 東京都千代田区丸の内3−3−1
                     新東京ビル9階917区 
                     第一協同法律事務所
                     
                    上記被告訴訟代理人        
                        弁護士  山西克彦
                        同     伊藤昌毅       
                        同     峰 隆之
                        同     平野 剛


頭書事件につき、被告(以下、会社ともいう)は下記のとおり弁論を準備する。(なお、原告の訴状の記載については、平成16年12月6日付訴状訂正申立書により訂正されていることを前提としていることを念のため付記する。)
   
                  記
第1、(訂正後の)「請求の趣旨」に対する答弁
     原告の請求をいずれも棄却する。
     訴訟費用は原告の負担とする。
   との判決を求める。

第2、(訂正後の)「請求の原因」に対する認否
1、「第1 事案の概要」について
  被告の深谷工場において「M2ライン」立ち上げプロジェクトが実施されたこと、および、平成16年8月6日に同年9月9日付での休職期間満了を理由とする解雇の予告通知を行ったことは認め、その余は否認ないし争う。

2、「第2 当事者」について
 (1)@ 「1 原告」の項の(1)の記載は認める。
    A 同行(2)の記載のうち、姫路工場液晶事業部への配属、深谷工場への転勤、および、深谷工場での所属が液晶生産技術部アレイ生産技術担当であったことは認め、「本件精神障害発症時」との点は不知。
    B 「訴状訂正申立書」での追加主張については、賃金の支払いが時間外等の割増賃金は翌月25日払いであるものの基本的には当月25日払いであることを指摘するほか、認める。
 (2) 「2 被告会社」の項の記載は認める。

3、「第3 原告の過重な業務及び精神障害発症・増悪」について
(1)「1 『M2ライン』プロジェクト発足と原告の精神障害発症」の項について
 @同項(1)アの第1段落の記載のうち、「立上げ期間が非常に短い」との点は争い、その余は概ね認める。
 立上げ期間は、会社が過去実施した液晶ラインの立上げと比較しても特段短期間というものではなく、また、原告が担当したドライエッチング工程は、ポリシリコン液晶特有の工程ではなく、1994年(平成6年)から既に量産実績のある従来の液晶ラインと共有性の高い工程であるため、新規性、困難性ともに軽微であったことを指摘しておく。
A 同項(1)アの第2段落の記載のうち、原告が「DRY工程PJ(プロジェクト)」のリーダーを務めたことは認めるが、その余は不正確であり争う。
 この「M2ライン」立ち上げプロジェクト(PJ)は、立ち上げが本格化する直前の2000年(平成12年)12月1日時点で総勢約200名のPJであり、これは4つのワーキンググループ(WG)から構成され、このうちの「工程WG」は5つのサブグループ(SG)に分かれる。このうちの「アレイSG」は約70名で、6つのPJ組織に分かれており、その1つである「PEP・加工PJ」は18名で、それが更に3つに細分化されたうちの1つが原告が属する「DRY工程PJ」であった。
 この「DRY工程PJ」のメンバーは6名で、原告を含む技術者4名(内1名は、既存製造ラインの業務との兼任)と製造ライン技能者2名で構成されていた。
B同項(1)イの記載のうち、朝会が平日の毎朝8時〜9時に実施されていたこと、退勤時刻が午前0時ないし1時頃となることが月に数回程度あったこと、および、装置の搬入・据付スケジュール等が所定休日にあたり休日出勤が月に数回程度あったことは認め、その余は否認ないし争う。
 朝会の出席については、他のPJではリーダーの出席が通常であったが、原告が属した「DRY工程PJ」では原告以外の2名の専任技術者(U、T)も十分なキャリアを有していたこともあり、リーダーに限定せず3名の専任技術者が持ち回りで出席することとしており、むしろ原告は朝会への出席率が低かったと言うのが実態である。
 また、所定休日の休日出勤はあったものの、週1日の法定休日は基本的に確保され、土・日の連休も相当程度確保されており、代休や年次有給休暇の取得も行われていたのであって、あたかも休日なしで働いていたかの如き原告主張は事実を偽るものである。
 さらに、原告らの職場はフレックスタイム制が適用されており、退勤時刻が遅くなった翌朝の原告の出勤は概ね午前9時以降となっていることを指摘しておく。
C 同項(1)ウの記載は否認する。
 当時の最重要工程はドライエッチングではなく、「CVD工程に関わる『信頼性改善』」であり、ドライエッチング工程については概ね順調に立ち上がっていた。
 なお、アレイ工程(SG)では木曜の午前に定例会議を行っていたが、これはドライエッチング工程についての対策会議という性格のものではない。
D 同項(1)エの記載は否認する。
 原告主張の期間を含む2000年(平成12年)10月〜2001年(平成13年)8月の会社月間所定労働時間に対する時間外労働(所定休日労働を含む)時間等は別紙(「勤務実績証明書」)記載のとおりであり(訴状の記載は、分単位への換算が誤っている)、法定労働時間に対する時間外労働時間は0時間〜68.86時間(原告主張の6ヶ月間で見ても平均50数時間程度)であって、休日や年次有給休暇の取得の実態に照らしても特に過重な労働実態であったとは到底いえない。
E同項(2)の記載は否認ないし不知
(2)「新たな業務の担当の要請等と原告の症状の増悪」の項について
@同項(1)アの記載は否認する。
 前述したようにドライエッチング工程は概ね順調に立ち上がっており、2001年(平成13年)5月時点ではドライエッチング工程の7台の装置は細かいトラブルはあっても稼動可能な状態であった。当時、7台中数台しか稼動していなかったのは、前述したCVD工程関係のトラブルと市況変化による需要減のために同年9月まで生産延期となったためであって、処理能力には問題はなく、ドラブル改善についても落ち着いて進められる状況であった。
なお、「M2ライン」立ち上げPJについては、同年3月末の移管会議をもってPJから製造部門への移管を行っており、その時点で原告のリーダーとしての業務は終了している。そして、移管後のドライエッチング工程の体制については製造部のS主事が中心となり、前述のU、Tの両技術者は移管後もドライエッチング工程業務を継続支援することとされたが、原告については残件のみを担当することとなった。(そして、この残件処理に目処がついた同年5月の上・中旬ころ、後述のように、原告を「反射製品」開発業務へ担当替えを行った。)
 ちなみに、ドライエッチング工程の技術担当者1名(U)がその後別の部署に移動となった事実はあるが、それは原告主張の「5月上旬」ではなく、同年6月16日付である。
A同項(1)イの冒頭(3行)の記載は否認する。
 F課長の原告に対する指示は、「反射製品」開発業務への担当替えであって、「……をも担当」などということで業務を追加する主旨のものではない。
 また、F課長は「M2ライン」立ち上げPJにおいて前述の「アレイSG」のリーダーを務めており、原告よりも上位の責任者として、前述のCVD工程関係のトラブルなどでも対策の指揮を行っている。
B同項(1)イ(ア)aの記載のうち、(a)については概ね認め、その余は否認する。
 なお、会社にとって「反射製品」そのものが新しい取り組みであり、原告のみならず誰にとっても初めての経験であった。原告にこの新しい業務への参加を指示したのは、視野を広げる教育的な意味がある。
 また、原告は「反射製品」開発業務のリーダーではなく、リーダーは(L製技)のS主務であった。原告は鈴木主務のもとでメンバーの1人としてスルー担当を務めた。(ちなみに、担当としては、他に、HRC担当、スパッタ担当、PEP担当があった。)
C同項(1)イ(ア)b(a)の記載のうち、原告が記載の会議を「主催」との点は否認し、その余は概ね認める。
 原告は会議の手続き等の担当者であって、主催者ではない。
D同項(1)イ(ア)b(b)の記載のうち、「承認会議」が特に「緊張度の高い会議」であるかの如き、および、「過大な精神的負荷」を与えるものであるか如き主張は争い、その余は概ね認める。
 「承認会議」も会社における通常の業務の1つであり、そもそも「承認会議」だからといって特に高い緊張とか過大な精神敵負荷を与えるというものではないし、原告にとってはスルー担当として初めて同会議についての業務に関与するものだとしても、周囲の上司や経験者などから助言等も得られるので業務の遂行に特別な困難はないのであって、正に会社の担当者としての日常業務の域を出ないものである。
 ちなみに、後述のように原告は5月23日から休み5月31日の承認会議を欠席することとなったが、HRC担当のF主事らが原告の担当業務を急遽カバーして滞りなく会議を終えている。
E同項(1)イ(イ)の記載のうち、F課長が原告に対しパッド腐食対策に言及したことがあることは認め、その余は否認する。
 「反射製品」開発業務のスルー担当として、パッドが腐食しては問題となるため当然に気を配らねばならない事柄であり、新たな業務を指示したというものではない。
F同項(2)の記載のうち、原告が5月23日から6月1日まで休み(但し、有給休暇取得とされており、欠勤とは扱われていない)、5月31日の承認会議を欠席したことは認め、その余は不知。
(3)「3 2001年6月以降の業務と原告の欠勤」の項について
 @同項(1)の冒頭(2行)の記載は否認する
 A同項(1)アの記載は否認する。
 B同項(1)イの記載のうち、原告が「半透過製品」に関するDR−C(レビュー会議)およびP−DAT(承認会議)にスルー担当として関与したことは認めるが、「主催担当」については否認し、また、その余についても否認する。
 C同項(1)ウの記載は否認する。
 D同項(1)エの記載のうち、2001年(平成13年)8月18日ころ、M2ライン歩留・信頼性対策チームを発足させ、その中に不良解析チームを編成し、原告をそのメンバーとしたことは認め、その余は否認する。
 E同項(2)アの記載は不知
 F同項(2)イの記載のうち、6月7日に原告が会社所定の時間外超過者検診を受診したことは認める。
 G同項(2)ウの記載のうち、2001年(平成13年)7月3日に「半透過製品」のレビュー会議が、同月5日に承認会議がそれぞれ行われたこと、および、原告が7月9日に有給休暇を取得していることは認め、会議を「主催」したとの点は否認し、その余は不知。
 H同項(2)エの記載のうち、第1段落は不知、その余は否認する。
 I同項(2)オの記載は否認する。
 J同項(2)カの記載のうち、会社の休日および8月6日の有給休暇の取得は認め、その余は不知。
 K同項(2)キの記載のうち、前記Dのとおり、原告を不良解析のチームのメンバーに業務変更したこと、および、原告が9月4日〜同月30日を休んだ(会社所定休日以外は有給休暇を取得)事は認め、その余は不知。
 L同項(2)クの記載は概ね認める。
(4)第4項の記載は争う。

4、「第4 解雇及び労災申請」について
 被告が2004年(平成16年)8月6日、原告に対し、同年9月9日付けで休職期間満了により解雇する旨の電話による通知と翌日付の書面通知を行ったこと、および、原告が労災申請を行ったことは認め、その余は争う。

5、「第5 安全配慮義務違反」について
(1)第1項の記載のうち、使用者の安全配慮義務の一般論を除き、被告の責任に関する部分は全面的に争う。
(2)「2 原告の損害」の項について
 原告の2000年(平成12年)の年収が568万5983円であったこと、および、会社の健康保険組合からの傷病手当金等の支給期間と支給率の内容は認め、その余は不知ないし争う。
 原告が援用する2000年の年収は賞与を含む金額であり、賞与については支払額が予め確定しておらず変動するものであり、計算根拠として不適当であることを指摘しておく。

6、「第6 結語」について
 争う。

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