東芝・過労うつ病労災・解雇裁判
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行政訴訟(労災不支給取消し訴訟)

平成19年(行ウ)第456号 療養保障給付不支給処分取消等請求事件

第5回弁論準備(非公開) 2008年9月25日 14:30〜


出席者 原告側 重光由美 川人弁護士 山下弁護士 小川弁護士 島田弁護士   
      被告(国)側 代理人5名 

場所   東京地裁 民事36部

■書面提出 
・原告側 9月18日 準備書面(3)、証拠申立書(証人尋問申請)提出
 原告は、被告準備書面(2)〜(4)への反論として、準備書面(3)を提出
 被告の「ストレスー脆弱性」論:「労働者のストレス脆弱性が確認できなくても、業務のストレスが強くない場合は、業務以外の要因、つまり労働者の脆弱性に問題がある」ので業務外であるとの主張は、「ストレスー脆弱性」論を曲解していて失当。
天笠医師の用いた手法miniを批判しているが、miniは信頼性確保につながりこそすれ否定される事にはならない。
等の反論を展開。
 また、証拠申立書で原告の証人尋問を申請

・被告側 9月18日 準備書面(5)、乙100、101号証提出 
 被告(国)は、O大学N教授意見書(乙100号証)を提出し、60時間以上を越える時間外労働が精神疾患の原因となり得るストレッサーであるとはいえない、原告の時間外労働が「極度の長時間労働」(生理的に必要最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働が数週間にわたって連続したものとは認められない)に当たらないと主張。これはまたも東芝の主張にそっくりでした。

■全体
原告被告双方提出された書面の確認の後、
原告側から、被告から提出された、O医師・N医師の2つの意見書が提出されたので、原告側からも医師の意見書を提出したいと話があり、了承されました。
続いて今後の協議について、証人尋問を行う日程が12月22日(月)と決まりました。
被告からは証人の申請なく、原告本人尋問のみが14:00から2時間ほどで行われることになりました。

次回の日程が11月21日13:10〜と決まり、
弁論準備は、淡々と、10分程度で終了しました。


□原告感想

2日前に届いた被告からの書面は非常に不愉快な内容でしたが、裁判では、大きな展開がありました!

2007年7月14日に提訴してからいつのまにやら一年以上が経過、東芝との解雇裁判に気を取られ、あまり目立つことなく進行していた行政訴訟。被告からの書面提出に時間がかかり、とずるずる引き延ばされているような状態でしたがいよいよ、証人尋問(原告本人尋問)が行なわれる事になりました。
東芝との裁判も控訴審にはいり、行政訴訟と2つの裁判をかかえ、先の見えない、裁判環境が続く状態に時には気分が沈みがちになったりもしましたが、とにもかくにも行政訴訟は大きな前進です。
相変わらず外出したことによる疲労で、午前中は寝込んでいる状態ですが、裁判で進歩があったせいか、気分は軽い。いよいよ証人尋問、行政訴訟も先が見えてきました


今回特筆すべきは、直前に提出されたO大学N教授の意見書!
O大学N教授の意見書の内容は残業時間に関する内容で、「残業時間60時間では精神疾患の原因にはならない」という内容のもの

確かに、東芝との裁判の判決文には、
「所定時間外労働時間は平均90時間、法定時間外労働時間は70時間であり、いずれにせよN教授の研究で優位さが見られたとする「60時間以上」というレベルを超えており、その業務内容も、業務内容の新規性、繁忙かつ切迫したスケジュール等、原告に肉体的・精神的負荷を生じさせたものという事ができる」
という文章があり、「60時間残業が精神疾患発症に及ぼす影響」に関する意見書が提出されれば争点の一つとなり得るかも知れません。

(ちなみに、法定時間外労働時間が70時間というのは残業時間から有給休暇時間分を不当に引いた、東芝の計算の数値であって、法定労働時間を70時間と認定した地裁判決は事実誤認といえます)

しかし、熊谷労基署は、法定時間外労働時間は、80時間以上であると、労災認定基準以上の残業時間を認めており、精神部会の意見書にもしっかりと「長時間労働が認められるため」という記述があります。
つまり、行政訴訟では、長時間残業を認めているのだから、「60時間では精神疾患の原因にはならない」という被告の主張は的外れといわざるを得ません。
なぜこんな意見書が行政訴訟で提出されるのでしょう。
N教授(医者)意見書はまるで東芝との裁判のために、書かれたようなもので、これはきっと、平行して審議が進んでいる東芝との解雇裁判控訴審で、東芝が提出してくるだろうなと思っていたら、
やっぱり、10月20日の東芝との控訴審で、東芝はみごとにN教授の意見書を提出したいと言ってきました。N教授の意見書が提出されてから1か月も経ってないのに、東芝がどこでこの書類の存在を知ったのか。
大企業と天下りお役所(厚生労働省)との癒着か・・・というまでも無く


元々、N教授の論文「残業時間60時間以上はストレス疾患の原因となりうる」は原告側から東芝との解雇裁判に提出した文献です。判決文では原告が主張したN教授の意見を採用していただきました。なのに、
まさかN教授自らが書いた「残業時間60時間では精神疾患の原因にはならない。原告の労働がうつ病発症の原因になっているとはいえない」という意見書が国から提出されるとは!

N教授の意見書は、労働時間のみに着目しており私の労働の質には全く触れず、
60時間以上の残業が精神疾患の発症で優位差が出たのはストレス状態者の場合であると主張。しかし、当時スケジュールやトラブルに追いまくられていた私の場合は、そのストレス状態者に当たるのではないでしょうか。

要はN教授の意見書は
業務の負荷はあった
長時間労働はあった(数か月にわたって残業80時間以上)
業務以外に発症する原因が無い

という、労災認定条件には触れず、
「極度の長時間労働(数週間に渡って生理的に必要な睡眠時間を確保できない労働)」にはあたらないので労災(業務上)と認められないという内容。
そして「60時間を越える残業は精神疾患の原因にはならない」という、まるで東芝との控訴審のために書かれたような意見書。

このN教授に意見書を書いてもらうのに、国(埼玉労働局か厚生労働省?)はいくらのお金を払ったのでしょうか?もちろんこれは税金で払われているわけですよね。

労働行政は労働者のためにあるのではないか。税金を使って、まるで東芝(会社)のために書いたとしか思えないような内容の意見書を教授に書かせるのか。
役所は天下り先を確保する事が仕事なのか?税金の無駄遣いをしないできちんと本来の仕事をしろ!
N教授の意見書を読んだ直後は、そいういう思いが強くてしばらく怒りが収まりませんでした。

このN医師は産業衛生学会などでは有名な方らしく、弁護士も知っているそうで、
「このような意見書を書くとは、非常に残念」と言っていました。
その前に提出されたO医師の意見書と言い、今回のN医師の意見書と言い
産業医学界はどうなっているのでしょう。社会のメンタルヘルスを向上させる気などあるのでしょうか。

とにもかくにも、行政訴訟(労災不支給取消し訴訟)でも被告(国)は徹底抗戦である事には間違いがありません。
N医師の意見書はこちら (名前が公表できない事が残念です)   

以上、ブログうつ病患者の裁判しながら日記の下記記事より引用
教授の意見書
教授の意見書2

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